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2014年10月 3日 (金)

安愚楽牧場事件,再度の不起訴処分。

安愚楽牧場事件について,検察審査会の不起訴不当議決に対し,東京地検特捜部が再度の不起訴処分を下しました。

情報元はこちら→http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-2014100300739/1.htm

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詐欺は再度不起訴=元安愚楽牧場社長ら-東京地検

 経営破綻した安愚楽牧場をめぐる事件で、特定商品預託法違反罪で起訴されたが、詐欺罪は不起訴となり、検察審査会が不起訴不当と議決した元社長三ケ尻久美子被告(70)らについて、東京地検特捜部は3日、嫌疑不十分で再び不起訴処分とした。
 強制起訴につながる起訴相当の議決ではないため、再度の不起訴に対し、検察審の審査は行われない。
 三ケ尻被告らは、顧客への利益金の支払いが滞るようになってからも、牛のオーナーの募集を続け、出資金を募っていた。これに対し、特捜部は同被告らが事業継続のために銀行と融資交渉を続けていたことなどから、だます意図があったとは言えないと判断。詐欺罪には当たらないと結論付けた。

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正直,この不起訴処分は,感覚的には,納得いかないです。

この記事を前提とすると,東京地検特捜部は,安愚楽牧場事件の詐欺の欺罔行為を,「出資金を返す意思も能力もないのに,これあるように装い,出資金を募った。」との行為だと構成して,詐欺の成否を検討したように見えます。

これだと,「被疑者らが事業継続のために銀行と融資交渉を続けていた。」との事情が,詐欺の成立を否定する方向に働いてしまうでしょうからね。

しかし,安愚楽牧場事件における詐欺の欺罔行為は,本来,「安愚楽牧場が保有する繁殖牛の不足のために出資者が繁殖牛を取得できないにもかかわらず,出資者が繁殖牛を取得できるように装い,出資金を募った。」との行為だと思います。

実際,安愚楽牧場事件の最大の問題点は,「1頭の繁殖牛に複数の識別番号を付けて頭数を水増しして出資者を募った。」という点でしょうし,このように構成すれば「出資金返還の意思及び能力」の存否は詐欺の成立に影響しないでしょうからね。

では,「東京地検特捜部は,どうして,そのような構成を採用しなかったのか?」と考えると,恐らく,東京地検特捜部は,「欺罔行為を『安愚楽牧場が保有する繁殖牛の不足のために出資者が繁殖牛を取得できないにもかかわらず,出資者が繁殖牛を取得できるように装い,出資金を募った。』との行為だと構成すると,被害者の特定及び犯意の立証が著しく困難又は不能となる。」と考えて,このような構成を避けたのだろうと推測します。

私が現時点で知る限りでは,安愚楽牧場旧経営陣は,出資金受領以前の時点では,「この人には正規の1番目の識別番号をつけよう。」,「この人には水増しした2番目以後の識別番号をつけよう。」などと明確に区別したのではなく,出資金受領以後の時点で,かなり行き当たりばったりな感じで,「よし,この人には水増しした2番目以後の識別番号をつけよう。」と決定した可能性を否定できないですし,仮にそうだとすると,「果たして,被害者の特定及び犯意の立証ができるのか?」という疑問は,確かに,湧いてくるのです。

そうすると,この問題をクリアするため,「個々の被害者ごとに詐欺の成立を検討するのではなく,『不特定多数の投資家一般に対し,継続的に,同一内容の定型的な働き掛けを行って出資を募るという態様のものであり,かつ,被疑者らの1個の意思,企図に基づき継続して行われた活動である。』という点を捉えて,すべての出資者との関係で詐欺の包括一罪の成立を認めることはできないか?」と考えたくなります。

そこで判例を調べると,最2判平成22年3月17日(平成21年(あ)第178号・最高裁判所刑事判例集64巻2号111頁)は募金詐欺の事案で詐欺の成立を認めましたが,この最2判平成22年3月17日(平成21年(あ)第178号・最高裁判所刑事判例集64巻2号111頁)は詐欺成立理由として「この犯行は,偽装の募金活動を主宰する被告人が,約2か月間にわたり,アルバイトとして雇用した事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったというものであって,個々の被害者ごとに区別して個別に欺もう行為を行うものではなく,」との事情及び「このような街頭募金においては,これに応じる被害者は,比較的少額の現金を募金箱に投入すると,そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり,募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって,個々に区別して受領するものではない。」との事情を挙げており,確かに,安愚楽牧場事件はこの点で最2判平成22年3月17日(平成21年(あ)第178号・最高裁判所刑事判例集64巻2号111頁)とは事案が異なるのですよね。

すると,詐欺の包括一罪の成立もどうも認めづらいということで,東京地検特捜部の不起訴処分はやはり正しい…と理論的にはなるのでしょうけど,感覚的に,この結論は,納得できないのですよね。

というのも,率直に考えて,「出資金受領の際に繁殖牛を水増しして1頭の繁殖牛に複数の識別番号を付けるって,これが詐欺でないなら,何が詐欺なの?」という気持ちは,どうしても否定できないのです。

誰か,私よりも賢い方が,この点,解決してくれないですかね。

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安愚楽牧場」カテゴリの記事

コメント

一寸したことの坩堝さま、いつもお世話になっております。

遅くなりましたが、今回もこちらの記事を転載させていただきましたのでお知らせいたします。ありがとうございます。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。


賢者様に期待します!「安愚楽牧場事件,再度の不起訴処分。」 (一寸したことの坩堝のブログより)
http://roko1107.blog.fc2.com/blog-entry-2754.html

roko様,

いつもありがとうございます。
今回の記事は,裏付けもないままに,私の思い付きを書き連ねただけなので,転載していただいて,恥ずかしい気もしますが,それでも,いつも気にかけていただいて,嬉しいです。
安愚楽牧場事件は,昨日の刑事控訴審判決で,また1つ,前進した気がしますね。
でも,これは,数ある問題の1つが一歩進んだだけで,まだまだ問題は残っています。
頑張ってくださいね。

一寸したことの坩堝さま
こちらこそ、いつもありがとうございます。
「あぐら物語日記」にまでコメントいただき恐縮です。

実は、今回も転載させていただいています。いつも勝手にすみません。m(__)m

【速報】若干減刑ながら実刑維持!(安愚楽牧場事件 預託法違反控訴審判決)
http://roko1107.blog.fc2.com/blog-entry-2771.html


安愚楽牧場事件の終わりまでは時間がかかることですが、ひとつひとつ積み上げるしかありません。でも着実に前進していると思います。
しかし、本音を言いますと被害者の未来や生活がありますので、できるだけ早く進んでほしいと願っています。

私は最後まで見届けたいと思います。
今後とも、事件に関心を持って見守っていて下さると嬉しいです。
ありがとうございます。

またまた転載,ありがとうございます。
本当に,長い道のりですよね…とここまで書いたところで,「あれ?そういえば,刑事控訴審の判決は確定したのだろうか?」と思って,安愚楽牧場被害対策弁護団のHPを見たら,双方上告せずで確定したとのことですね。
とりあえず,実刑判決獲得おめでとうございます。
しかし,まだ,詐欺罪での刑事告訴の件も続いていますし,国家賠償請求訴訟もありますし,三ヶ尻久美子の破産免責の可否もありますし,途半ばです。
頑張ってください。

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